離婚届の偽造と刑事責任
配偶者が勝手に離婚届を書いて役所に出してしまうことがあります。離婚届に相手に無断で相手の氏名を代書し押印して役所に提出した場合(役所では離婚届の外形が形式的に整っていれば、それを確認するだけで受け付けてしまいます)、有印私文書偽造罪、同行使罪、公正証書原本等不実記載罪などの刑法上の犯罪になります。離婚届という私文書を偽造し、それに捺印し、その偽造文書を行使し、戸籍に事実と違う記載をさせたということです。離婚届けの偽造は犯罪です。
偽造されたとときは、偽造した者を刑事告訴するという方法も考えられます。離婚届を偽造されたのに、それに対して何もしないでいると偽造でないことを認めたに等しくなります。だからあまり時間をあけてもいけません。偽造に気がついたら、まず警察に相談することを考えましょう。ただし、偽造した人は、「離婚は合意していた。離婚届を書くことは承諾を得ていた。」と弁解することが考えられます。そうなると、たとえそれが嘘であっても、警察はそれが嘘であるという決めてがないと、なかなか動きません。刑事事件というのは、捜査機関の方が、その人が犯罪を犯したことを百パーセント立証する責任を負うので、非常に慎重なものなのです。偽造したことを認めた録音などの証拠がないと、刑事責任を取らせるのは容易ではありません。明らかに筆跡が違う、離婚の条件についての合意が全くなかったなどの事情が重要になります。
離婚届の偽造と民事問題
民事的にも偽造の離婚届は無効です。そもそも、離婚するには当事者双方に離婚する意思があることと、離婚届を出す意思があることが前提です。夫婦のどちらかに離婚する意思がない場合は、その離婚は受理されても無効です。ただし、法律的には無効なのですが、役所で受け付けられて戸籍には離婚したと記載されてしまいますので、離婚の無効を、調停、審判、裁判そして判決など裁判所の手続で確認することが必要になります。つまり偽造した離婚届けを出された方がその無効を裁判所で訴える必要があります。そのうえで戸籍を直すことになります。結果的に離婚届を偽造した方が有利になって、勝手なことをされた方が苦労して手続しなければならないのは不合理ですが、法律の制度上、仕方ありません。面倒な手続きですので弁護士に相談してください。