面会交流を間接交流にとどめた高裁決定

平成27年6月12日東京高裁決定 判例時報2266号
まず高裁の決定を紹介します。
1 相手方(妻)は、本決定確定後、二カ月に一回、抗告人(夫)が○○宛に送付した未成年者らへの手紙を速やかに未成年者らに渡さなければならない。
2 相手方は、抗告人に対し、本決定確定後、四カ月に一回、未成年者A男(当時7歳)の近況を撮影した写真(未成年者A男の顔及び全身を写したもの各1枚)を送付しなければならない。
3 相手方は、抗告人に対し、本決定確定後、四カ月に一回、未成年者B男(当時5歳)の近況を撮影した写真(未成年者B男の顔及び全身を写したもの各1枚)を送付しなければならない。
4 本件手続費用は、原審及び当審を通じて各自の負担とする。
 これが東京高裁の決定でした。つまり、直接の面会交流は認めず、別居中の父親は二カ月に一回、子供に手紙を出す。子供と同居中の母親は四カ月に一回、子供の写真を父親に渡すという間接交流だけを認めるということです。

高裁がこのような判断をした理由の部分を紹介します。

(面会交流に関する一般論)

「面会交流は、子の福祉の観点から決せられるべきであり、子の福祉に反すると認められる特段の事情のある場合には、認められるべきではないことが明らかであり、かつ、上記特段の事情の有無は、裁判官の主観的な判断ではなく、客観的で合理的な判断にって決せられるのであるから、裁判官が子の福祉を口実にどのようにでも介入できるということにはならない。また、共同親権者であるからといって、子の福祉の観点から子との面会交流が制限されることがないということはできない・・・。」
ここは面会交流に関する一般的で基本的な考え方を示した部分です。ここについてはとくに異論はないでしょう。

(この事件の個別特殊な事情)

(夫婦間の激しい対立関係)
この東京高裁決定の4年前に妻が子供を連れて出て夫婦は別居しています。別居後、夫婦間では、妻から離婚調停を申し立てたけれども調停では解決できずに裁判となる、妻から婚姻費用分担調停を申し立ててこれも審判になる、夫から監護者を父親に定めることを求める審判及び審判前の保全処分が申し立てられる、妻から保護命令が申し立てられる、など離婚と子供に関する多数の事件が申し立てられて4年間、鋭く対立していました。
(妻の通院、妻の精神状態が子供へも影響する)
「相手方は、抗告人から同居期間中に受けた暴力及び暴言、別居後の長年にわたる裁判等のストレス似寄り、心的外傷後ストレス障害(心因反応)との診断を受け、現在も通院を続けている。」
高裁はこういう事実認定を前提として子供らについて、そのような母親の様子を間近に見てきたことによって心因反応(情緒不安定)を発症したと推認しました。

(解説)

この高裁決定の第一審にあたる東京家裁は、母親が父親に対して四カ月に一回程度子供たちの写真を送付することだけを決めていました。
高裁は、面会交流は双方向(子供側から父親という方向と、父親から子供側へという双方向)であるべきであるとして、母親から子供の写真を父親に送るだけでなく、父親から子供たちへの手紙の送付もすべきとした点が基本的な違いとなります。
つまり、家裁も高裁も、父親と子供たちとの直接の面会交流は認めず、写真や手紙の送付という間接交流にとどめるという判断に違いはありませんでした。
別居する子供との直接の面会を認めなかったその根本的な理由は別居前からの激しい夫婦間の対立関係でしょう。同居中から別居後も、いくつもの調停や審判、裁判を行ってきたときも、ずっと激しい対立関係が続いていました。ストレス障害なども全てその影響です。両親間の激しい対立関係に子供の精神も巻き込まれるのは仕方ないことでしょうが、面会交流をうまく進めるためには少し抑えないといけません。

離婚問題

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