養育費,大学進学費用を認めた例

離婚した後の養育費は通常は子供が未成年である間,つまり子供が20歳になるまで認められます。子供が大学に進学すると途中で成年になるので,成年に達したその後の子供の生活費を親が負担する必要はないはずです。しかし,裁判所は一定の範囲で大学卒業までの学費や生活費等についても非監護親の負担を認めることがあります。

この裁判例は子供が私立大学に進学したときに,国立大学に進学した場合の費用を基準にし,算定表に含まれている学費等を超える部分の分担を認め,さらにその分担額を決めるにあたっては,そもそも離婚していなくても子供がアルバイト等をしないと学費負担ができなかったことも考慮しました。 大阪高等裁判所平成27年4月22日決定(判例時報2294号)

事案

父親(非監護親 年収約334万円)と母親(監護親 年収約192万円)は協議離婚し,二人の女の子の親権者は母親となりました。長女が私立大学に進学し,二女は高校生。長女の私立大学の進学費用(養育費)の負担について争いになりました。なお長女の私立高校の学費等は主に奨学金で賄われました。

大阪高裁の判断

父親は,長女が将来国立大学に進学するというので,公立高校に比べて学費の高い私立高校への進学を了承したのであり,私立大学への進学を了承したことはない。長女が高等学校に進学する際に,長女が国立大学に進学することを視野に入れていたと認められるから,国立大学の学費標準額及び通学費用分については父親も応分の負担をするものとして養育費の額を算定するのが相当である。

※ここまでが抽象論です、実際に進学したのは私立大ですが裁判所は国立大学の学費等を基準としました。

具体的な金額

長女の学費は85万円程度であるが,国立大学の学費の標準額は国立大学等の授業料その他の費用に関する省令で年53万5800円と定められていることから,長女の学費としては53万5800円として父親が負担すべき養育費の分担額を算定する。 長女の大学の学費等は年額66万5800円(53万5800円+13万円)となるところ(筆者注 13万円というのは原審で長女の年間通学費として認められた金額です。13,000×10ヶ月),標準的算定表では基礎収入の算定において公立高校を前提とする標準的学習費用として年33万3844円を要するものとして予め考慮されていることからすると,標準的算定表の試算額を超える長女の学費等は33万1956円(66万5800円-33万3844円)となる。

当事者の分担割合 そして,当事者双方の収入等からすると,仮に,当事者双方が離婚していなかったとしても,当事者双方の収入で長女の学費等の全額を賄うのは困難であり,長女自身においても,奨学金を受けあるいはアルバイトをするなどして学費等の一部を負担せざるを得なかったであろうことが推認されることなどからすれば,上記超過額のうち,父親が負担すべきものは,その3分の1とするのが相当である。

したがって,父親が負担すべき長女の学費等は年間11万0652円(33万1956円×1/3 )となり,一カ月当たり9000円(1000円未満切り捨て)となる。 以上によれば,父親は,長女の養育費として月額3万円(2万1000円+9000円)を,二女の養育費として月額2万1000円をそれぞれ負担すべきである。

※以上が裁判所の判断です。20歳を超えたときの費用なので子供の大学進学に対する父親の考えを考慮しています。父親の負担を3分の1としたのは,おそらく両親と子供の3人で各3分の1と考えたのでしょう。子供の生活水準や進路が親の経済力によって左右されるのは当然なので,離婚していなくても出せなかった金は離婚しても出せるようにはなりません。進路については親子で相談して決めることです。

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