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7年別居しても離婚が認められなかった判例

投稿日: 2024年2月13日  | カテゴリ: 離婚,その他の問題

東京高裁平成30年12月5日判決


事案
平成5年に夫Aと妻Bは婚姻し二人の子供が生まれました。
その後、夫Aの実父であるCが高齢のために一人暮らしが困難となったため新たに購入したマンションで実父Cと一緒に暮らし始めました。BがCの日常生活の面倒をみるようになりました。
平成23年6月からAは単身赴任しました。
平成23年7月、AからBに対し、電話で意図や動機の説明をすることなく離婚したいと告げ、それ以降両者の間で話し合いは行われませんでした。
平成23年11月、Aは夫婦関係調整調停を申し立てましたが調停は不調になりました。
平成24年10月、Aは離婚訴訟を提起しましたが離婚は認められず平成25年10月に控訴も棄却されました。
C(夫の実父)は、Bやその子(Cの孫になる)の将来を案じて、Bに金銭を贈与し、
生命保険の受取人をBとその子らに変更し、平成25年10月にBと養子縁組しました。
平成28年11月、C(妻が同居していた夫の父親)が亡くなりました。
平成29年1月、Aが離婚調停を提起しましたが同年4月に不調終了しました。
平成29年6月、Aが離婚訴訟を提起しました。
平成30年6月、一審の東京地方裁判所は離婚を認容しました。妻は控訴しました。
平成30年12月、東京高裁は逆転判決を下し、夫の離婚請求を認めませんでした。

 

離婚を認めなかった高裁判決の要旨

 

判決文中の参考になりそうな部分を書いていきます。
(判決)

婚姻により配偶者の一方が収入のない家事専業者となる場合には、収入を相手方配偶者に依存し、職業的経験がないまま加齢を重ねて収入獲得能力が減衰していくため、離婚が認められて相手方配偶者が婚姻費用分担義務(民法752条)を負わない状態に放り出されると、経済的苦境に陥ることが多い。また、未成熟の子の監護を家事専業者側が負う場合には、子も経済的窮境に陥ることが多い。
 一般に、夫婦の性格の不一致等により婚姻関係が危うくなった場合においても、離婚を求める配偶者は、まず、話し合いその他の方法により婚姻関係を維持するように努力すべきであるが、家事専業者側が離婚に反対し、かつ、家事専業者側に婚姻の破綻についての有責事由がない場合には、離婚を求める配偶者にはこのような努力がより一層強く求められているというべきである。
 また、離婚を求める配偶者は、離婚係争中も、家事専業者側や子を精神的苦痛に追いやったり、経済的リスクの中に放り出したりしないように配慮していくべきである。
 原告(夫)は、さしたる離婚の原因となるべき事実もないのに、単身赴任中に何の前触れもなく突然電話で離婚の話を切り出し、その後は被告(妻)との連絡・接触を極力避け、婚姻関係についてのまともな話し合いを一度もしていない。これは弁護士のアドバイスにより、別居を長期間継続すれば必ず裁判離婚できると考えて、話し合いを一切拒否しているものと推定される。
 離婚請求者側が婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠るという本件のような場合においては、別居期間が長期化したとしても、ただちに婚姻を継続しがたい重大な事由があるとすることは困難である。
 被告が話し合いを望んだが叶わなかったとして離婚を希望する場合には本件のような別居の事実は婚姻を継続しがたい重大な事由になり得るが、話し合いをする原告が離婚を希望する場合には本件のような別居の事実が婚姻を継続しがたい重大な事由に当たるというには疑問がある。
 したがって、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとはいえないから、原告の離婚請求は理由がない。

(解説)

ここまでで「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められないと言っている以上結論は出ているのですが、高裁はこれに引き続き、原告の請求が信義誠実の原則に反するかどうかについて判断しています。
普通は「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められるので離婚請求が認められそうなときに、しかしその請求は信義誠実の原則に反するから例外的に認められないという論理になるので、ちょっと特殊な判決に思えます。

「信義誠実の原則」に関する部分の高裁判決を紹介します。
(判決)仮に、婚姻関係についての話し合いを一切拒絶し続ける第一審原告が離婚をする場合においても、別居期間が平成23年7月から7年以上に及んでいることが婚姻を継続しがたい重大な事由に当たるとしても、第一審原告の離婚請求が信義誠実の原則に照らして許容されるかどうかを検討しなければならない。
(解説)

別居期間が7年という長期間だったので、高裁は理論的には書く必要がないことまで言及しているようです。
(判決)

離婚請求が信義誠実の原則に反しないかを判断するには
①離婚請求者の離婚原因発生についての寄与の有無、態様、程度
②相手方配偶者の婚姻継続意思および離婚請求者に対する感情
③離婚を認めた場合の相手方配偶者の精神的、社会的、経済的状態および夫婦間の子の監護・教育・福祉の状況
④別居後に形成された生活関係
⑤時の経過がこれらの諸事情に与える影響
などを考慮すべきである。
(解説)

ここで「信義誠実の原則」に反するかどうかを判断するときの一般論を展開しています。こういう要素を考慮すべきということはとくに異論はないと思います。
(判決)

本件では、婚姻を継続しがたい重大な事由(話し合いを一切拒絶する原告(夫)による、妻、子ら、病親を一方的に放置したままの7年以上の別居)の発生原因はもっぱら原告(夫)の側にあることは明らかである。
他方、被告(妻)は非常に強い婚姻継続意思を有し続けており、原告(夫)に対しては自宅に戻って二女と同居してほしいという感情を抱いている。
離婚を認めた場合には原告(夫)の婚姻費用分担義務が消滅する。専業主婦として婚姻し、職業経験に乏しいまま加齢して収入獲得能力が減衰し、原告(夫)不在という環境下で亡義父および子2人の面倒を一人でみてきたことを原因とする肉体的精神的負担によるとみられる健康状態の悪化に直面している被告(妻)は、離婚を認めた場合には、原告(夫)の婚姻費用分担義務の消滅と財産分与を原因としてマンションという居住環境を失うことにより、精神的苦境および経済的窮境に陥るものと認められる。
二女もまた高校生であり、原告(夫)が相応の養育費を負担したとしても、被告(妻)が精神的苦境および経済的窮境に陥ることに伴い、二女の監護・教育・福祉に悪影響が及ぶことは必至である。

他方、これらの被告(妻)および二女に与える悪影響を、時の経過が軽減ないし解消するような状況はみられない。
原告(夫)は、婚姻関係の危機を作出したという点において、有責配偶者に準ずるような立場にあるという点も考慮すべきである。・・・
以上の点を総合すると、本件離婚請求を認容して原告(夫)を婚姻費用分担義務からすることは正義に反するものであり、信義誠実の原則に反するものとして許されない。

(解説)
一審は別居期間と夫の意思が固く婚姻関係が回復する可能性がないので破綻として離婚を認めたと思います。しかし高裁は半年間以下の短い審理で、どうしてここまで被告(妻)の味方をしたのか・・・理解しがたい点が残ります。
弁護士の一般的な認識としては一審の方が普通に予想される判決で高裁の方が例外的な判決に見えます。

ただ、この事件は普通の離婚裁判と少し違う点があります。それは、なぜ原告(夫)が別居することになったのか?同居中の家庭内ではどういう問題があったのか?その点がとても弱いのです。この点は第一審判決中に、原告(夫)の主張として少し書かれています。夫の主張では、
「被告(妻)は専業主婦であり、健康状態に問題を抱えているわけでもないのに、血圧が低い、朝が弱いなどの様々な訴えをして食事の支度、片づけ、掃除等の家事をおろそかにし、生ゴミを原告の靴の上に置いたり、原告の服装や外見を誹謗中傷するほか、原告(夫)が買い物をすると値段等を執拗に聞いたり、浪費大王などのあだ名を付けるなどした。
被告(妻)は子らの教育方針に関する原告(夫)の意見を一切無視するほか、子らに対しては、頭が悪い等の暴言や暴力を繰り返していた。」と書いてあります。

裁判では別居する前の事情としてはこの程度のことが夫から主張されていました。これだけでは弱いです。夫婦仲が悪くなり別居することはよくあることですし、家を出て行った方が必ず悪いというものでもありません。夫婦仲が悪くなって悪くなってどうしようもないから仕方なく出て行ったというのが普通です。どうして別居せざるをえなくなったのかという事実をしっかりと裁判で主張するものなのです。離婚判決を得るにはこの事実経過こそが大切なのです。
しかし、この事件ではあまりたいした事実が夫から主張されていません。この点が特殊な感じがします。離婚を相手から争われているときはどれだけこういう事実しっかりと書くことができるかで裁判は決まってしまいます。そういうことが分かっている弁護士でないといけません。
とにかくこの判決から7年別居しても離婚できないと考えるのは間違いです。そう単純なことではありません。


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