メールやラインによる離婚後の子供との交流

東京高裁令和1年8月23日決定 判例時報2442号
離婚した後の面会交流の方法としてメールアドレスやラインのID通知を認めた例
離婚した後に行う子どもとの面会交流というのは、本来は文字通り子供と別居する親が直接会うことです(直接交流)。しかし、非同居親との面会が子どもの福祉に反するような場合には、ときとして子供との直接の面会ではなく、子供に手紙を送るという間接交流だけが認められる場合もあります。子供との間接交流の方法としてはその他にも写真やビデオを別居する親に送ってその成長を見てもらうという方法もあります。

このケースでは、間接交流の一つの方法として、電子メールアドレスとラインのIDを父親に通知するということを認めました。
子どもは男の子が3人、年齢は令和元年のこの決定の当時で19歳、16歳、14歳でした。子供との面会交流事件としては子供の年齢が相当に高い事例です。一番上の子は今なら成人です。平成28年1月の離婚時の和解条項中に、少なくとも月に1回の面会交流が定められていましたが、同年4月の面会を最後に子どもらと父親との面会交流が実施されなくなりました。
平成30年に父親が面会交流を家庭裁判所に申し立てました。
平成31年、家庭裁判所は、直接の面会は認めず、手紙、写真、成績表の送付だけを認めました。
令和1年、東京高裁は、直接交流を認めなかった点は家裁と変わらないのですが、子どもらとの関係修復を図るため、より簡便で効果的な連絡手段の利用を認める必要性が高いとして、電子メールのアドレスやラインのIDなどの連絡先を父親に通知することを認めました。
解説
このケースでは子どもが充分大きいし3人もいるので、直接の面会に拘らずに直接、メール等で連絡が取れるということの意義は大きいです。そもそも離婚していない家庭であっても子どもが十代になったらほとんど親と一緒に行動しない、話もしないという家もあるので直接の面会にこだわり続けるよりは、いつでも直接連絡できるということの方が実質的で重要だと思います。このくらいの年齢の子供だと、月に一回会うよりも、週に1~2回、メールやラインで近況についての簡単な話をする方が子供の様子が知れて良いようにも思います。電子メールやラインは間接交流の新しい方法の一つとして今後は増えていくかもしれません。

子供との面会交流は離婚のときの大きな問題の一つです。別居親からみると、それまでは毎日の様に顔を合わせていた子供と月に一度も会えないのはおかしいと感じます。そのため面会交流を週に一度したいと思うこともよくあります。しかし、実際に別居する生活が始まってしまうと、子供には学校や幼稚園の行事もあり、意外と頻繁に面会することは難しくなります。とくに子供が小さいときはその受け渡しにも立ち会うことになるし、どこか受け渡しの場所まで送っていくことにするとそれも手間がかかります。離婚したケースの多くで子供との面会を月に一回としているのは、実際に面会交流を始めてみると、確実に面会が可能な期間としてけっこう合理的な間隔に思えます。別居して別々の生活が始まると、双方に別々の予定が入るようになり、同居していたときと同じにはできなくなるのです。子供との面会交流については現実的に可能な範囲で始めて、何回も繰り返していくうちにもし可能なら、双方がより柔軟に対応していくのが望ましいと思います。

子供との面会交流の問題を扱うことも多いので、お気軽にご相談ください。電話、メールで法律相談を申し込んでください。

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