監護親の立ち会いを認めた面会交流

東京高裁平成30年11月20日決定
子の面会交流について監護親の立ち会いを認めた例

事案

結婚してから審判まで6年で、子どもは審判当時5歳(詳しい事情は裁判所の決定に書いてないので正確ではありません)、子どもが3歳のころに夫が子を連れて別居しました。妻は監護親を妻(母親)とし子の引渡を求める審判を申立てそれが認められました。別居から10カ月後、夫は妻に子を任意に引き渡しました。夫(父親)は子との面会交流調停を申立て審判に移行しました。また、夫と妻は審判当時は離婚裁判をしており、まだ離婚はしていない状態でした。

家裁審判と高裁の決定

一審となる家庭裁判所は、面会の頻度や時間、引渡方法などを具体的に定めて面会交流を認めました。それに対し妻は、連れ去りの危険があるなどとして直接の面会交流は否定されるべきと主張し即時抗告しました。それに対する高裁の判断が今回の決定です。高裁は家裁の定めた面会方法に加えて、妻が面会に立ち会うことができるという条項を付け加えて面会交流を認めました。

高裁が認めた面会方法

高裁は次の方法の面会を認めました。用語は分かりやすさのため変更しています。
1項 妻(母親)は、夫(父親)に対し、次のとおり、子を父親と面会交流させなければならない。
(1) 頻度 月1回、第2週の月曜日から金曜日までの日のうち当事者の協議により定める日。
ただし、当事者間の協議が調わない場合は、第2土曜日とする。
(2) 各回の面会交流時間 5時間とし、具体的な時間帯は当事者間の協議により定める。
ただし、当事者間の協議が調わない場合は、午前10時から午後3時までとする。
(3) 子の引渡方法 母親は、面会交流開始時に、引渡場所において子を父親に引渡し、父親は、面会交流終了時に、引渡場所において子を母親に引き渡す。
なお、引渡場所は、当事者間の協議で定めるが、協議が調わない場合は、B線C駅東口ロータリーとする。
(4) 代替日 子の病気や幼稚園及び学校の行事等のやむを得ない事情により、上記(1)に従い定められた日程で面会交流を実施できない場合には、当事者双方は、協議により代替日を定める。
なお、協議が調わない場合は、第3土曜日、第4土曜日の順に代替日とする。
2 母親は、前項の面会交流における父親と子との面会交流に立ち会うことができる。※ この条項が高裁で付け加えられたものです。

解説

一方の配偶者が突然、子ども連れて別居するという事態はしばしば起こります。突然、出て行かれた方は大きなショックを受けるのであまり好ましくはないのですが、先に別居を宣言しておくとより大きな紛争や暴力などの危険がある場合にはやむを得ない側面もあります。そういう場合は当日中の連絡や最低限、置き手紙等で事情を伝え、連絡方法も維持するようにするものです。突然、連絡も付かなくなるのは例外的な場合に限られるでしょう。
一般的には母親が突然出て行くケースが多いですがこの事件では父親が子と突然出ていった点が特殊です。
離婚後の面会交流事件はよくありますが、離婚前は比較的少ないです。それは離婚までの期間それほど長くないからでしょう。
面会交流は問題にならないケースでは全く問題になりません。夫婦仲がいくら悪くなっても子どもは別だと冷静に考えることができる夫婦の間では、別居しても子どもとの交流は普通に続いているので問題にならないのです。
したがって面会交流が調停、審判となる事件というのは、夫婦仲が悪くなって相互の不信感が強くなり子どもを実際に監護している親が相手配偶者と子どもとの面会に対して消極的だというケースになります。
そういう風に仲が悪く不信感が強くなっているので、子の面会時に立ち会う=嫌っている相手と一緒にいるということは普通はないです。子どもが何を言いだすかわからないし、うっかり相手と話をしてしまうと子どもの前で喧嘩になる可能性が高いので口を開くにも気をつかいお互いに非常にやりにくいことになるものなのです。
なお、高裁は「第三者機関の利用については、父親が反対していることに加え、費用負担の問題が生じるところ・・・婚姻費用等の支払いをめぐって面会交流が中断した経緯をも考慮すると、第三者機関の利用による面会交流は適切とはいえない。」とも判断しています。
この高裁決定は、そんなに不信感があるならあなたが立ち会えばいいという割り切った判断です。

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