離婚の紛争では、ときどき、別居している親が小さな子供を連れ去ってしまうことが起きます。その理由は子供の親権かどうしても欲しいという親権争いもあれば、子供を連れてくれば配偶者が離婚をあきらめて戻ってくるだろうという身勝手なものまで様々です。子供が連れて行かれてしまった場合には、家庭裁判所の手続で、「子の引き渡しの審判」を申し立てることができます。しかし、審判手続で子供を戻すようにという結論が出るまでには時間がかかるので、もっと速やかに子供を戻すため、「子の引き渡しの審判申立」と同時に、審判前の保全処分も申し立てます。保全処分というのは、判決を待っていることができないほど緊急を要するときに、速やかに権利状態を回復するものです。この二つの手続を、同時に家庭裁判所に申し立てるのです。どちらの手続も本人が行うのはとても難しいので弁護士に依頼した方がいいでしょう。
審判を申し立てられた家庭裁判所では、連れ去りの経緯、無理やり連れて行ったのか、それとも同意があったのかなどの事情、それまでの間に子供を育てていたときの状況、誰がどのように子供の面倒をみていたのか、連れ去り後の子供の養育状況など、色々な事実を調査したうえで判断します。これも弁護士以外では対応が困難な部分です。また、連れ去りからあまり時間が経過してしまいますと、保全処分も審判も認められにくくなっていきますので、申立の時期もよく考えなくてはいけません。しかも、連れ去りは緊急の対応を要しますが、離婚という紛争の本体もあり、それへの対応も必要です。いろいろな事態への対応か求められますので、とにかく早急に弁護士に相談すべきです。