離婚と養育費

離婚したときに、未成熟の子がいるときは、子供の養育費が問題になります。離婚していなくても、もともと親は子供を養育する義務があります。離婚しても親子関係は変わらないので、やはり親は子供を養育(民法では監護の費用とされています)しなければならないのです。離婚して子供と同居することになった親は、食事の支度など日常的に子供が生きて成長していくための活動をしています。別居している親はそういうことはできませんが、子供の生活費を負担することで子供を養育する義務を果たしていきます。

養育費を払う対象になる子供は「未成熟子」とされているので、「未成年」とは厳密には違います。調停の実務では、養育費を払う子供の年齢が高校卒業までとか20歳になる月までと決められることが多いです。養育費の金額については、家庭裁判所に算定表がありますので、もっぱらそれが利用されます。これは、両親双方の収入と子供の年齢、子供の数を基にして作られた早見表です。算定表は私の事務所にもありますので、ご相談のときに一定の目安をつけることもできます。

子供が高校を卒業した後、専門学校や大学に進学したいとき、その費用を養育費として払ってもらえるか心配になることがあります。とくに20歳をすぎて成人になったら、本来、一人前の大人として自分の力で生きていくべきではないかと考える人もいます。この点については、子供が成年に達していても、親の資力、や学歴、社会的地位などから通常、高校卒業以上の高等教育を受ける家庭環境である場合には、親に大学の教育費などの負担をさせることができるとされています。 しかし、子供がまだ小さいときに離婚して養育費を決めるときは、将来、大学に進学する費用を負担するとまで決めることはあまりありません。なぜなら、10年後、15年後に子供が大学に進むのか就職するのかは全く予想がつきません。そんな先のことまで決めるのは不確定要素が多すぎて適当ではありません。それに、それなりの経済的余裕が親にないと子供を高等教育機関に進学させることはできませんが、これは親が離婚していても、離婚していなくても同じです。子供が大学への進学年齢に達したときの親の資力も不確定です。それなので、あまり先のことまでは決めきれないのです。

子供が高校生位であると養育費を決めるときに同時に大学進学の費用の負担についても決めることがあります。そういうときには、子供を大学に行かせてやりたいという同居親の気持ちよりも、当の子供と学費を出す別居親との関係の方が重要になってきます。それまでの子供と親との関係が良好で進路についても話し合える関係にあれば非常にスムーズにいきます。しかし、両親の喧嘩に子供が巻き込まれていると子供と別居親との関係も悪くなっていることが多く、うまくいかなくなります。もし、両親が離婚していなければ子供の進路は両親とその子供との相談で決めていたはずです。たとえ離婚でもめていても、子供と親との冷静な関係は大切にしておきたいところです。