離婚,家庭裁判所

裁判所の種類

協議離婚できないときは家庭裁判所を利用して調停と裁判で離婚事件を解決することになります。離婚にとって重要な家庭裁判所とはどういう所でしょうか。

裁判所にも種類があります。まず、民事事件であれ刑事事件であれ、普通の一般事件を扱うのは「地方裁判所」です。ただし、民事事件でも金額の小さいものとか、刑事事件でも比較的軽い罪の場合は、「簡易裁判所」が扱います。 そうすると、人が最初に裁判に訴えるのは、普通は「地方裁判所」か「簡易裁判所」になります(例外はあります)。 地方裁判所は各都道府県の都道府県庁所在地にあります(北海道は広いのでもっと多いです)。神奈川県では横浜にある「横浜地方裁判所」です。しかし、各都道府県に地方裁判所が一つだけでは離れた場所に住んでいる人にとっては不便なので、地方裁判所の「支部」というものが多数存在します。「横浜地方裁判所」では、川崎、横須賀、相模原、小田原にそれぞれ「支部」があります。支部にはそれぞれの管轄があります。 「地方裁判所」で受けた判決に不服があるときは控訴して「高等裁判所」で控訴事件が審理されます。「簡易裁判所」で受けた判決に不服があるときに控訴すると「地方裁判所」で控訴事件が審理されます。最高裁判所は日本に一つだけ、下級審で争いがある問題をはっきりさせる必要があるときや憲法違反、判例違反などの場合に判断を行います。

家庭裁判所

家庭裁判所も地方裁判所と同じ様に各都道府県にあり、本庁の他に支部があります。家庭裁判所は、家事事件(離婚、相続など)と少年事件(未成年の犯罪など)を専門に扱う裁判所です。民事、刑事は地方裁判所、家事、少年は家庭裁判所ということです。離婚の関係では、離婚調停、審判、離婚裁判(人事訴訟)などを家庭裁判所が扱います。

神奈川県内の家庭裁判所と管轄

神奈川県内には次の家庭裁判所があります。

  1. 横浜家庭裁判所(管轄 横浜市、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、大和市、海老名市、綾瀬市、高座郡)
  2. 横浜家庭裁判所川崎支部(管轄 川崎市)
  3. 横浜家庭裁判所横須賀支部(管轄 横須賀市、逗子市、三浦市、三浦郡)
  4. 横浜家庭裁判所相模原支部(管轄 相模原市、座間市)
  5. 横浜家庭裁判所小田原支部(管轄 平塚市、中郡、小田原市、秦野市、南足柄郡、足柄上郡、足柄下郡、厚木市、伊勢原市、愛甲郡)

家庭裁判所の内部

家庭裁判所には、審判官(裁判官)、書記官、家庭裁判所調査官その他の職員がいます。審判官は裁判官であることがほとんどですが、経験豊かな弁護士が日を決めて審判官をしている場合もあります。書記官というのは、法廷に立会う、調書を作成する、裁判が円滑に進行するように弁護士や検察官、訴訟当事者等と打合せを行います。家庭裁判所調査官というのは、離婚や親権者の指定・変更等の事件で実情を調査したり、少年事件では非行の原因、生育歴、生活環境等を調査します。言葉は似ていますが「最高裁判所調査官」というのは全く別のもので、優秀な裁判官(判事)が任命されて、最高裁判所裁判官のために上告事件の調査を行うものです。

調停委員

離婚調停のときに顔を合わせることになる調停委員は、調停のあるときだけ出勤する裁判所の非常勤の職員となります。 「調停委員は,調停に一般市民の良識を反映させるため,社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。具体的には,原則として40歳以上70歳未満の人で,弁護士,医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士などの専門家のほか,地域社会に密着して幅広く活動してきた人など,社会の各分野から選ばれています。」(裁判所のホームページから引用) この中で医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士などの専門家は、家事調停ではなく民事調停、その中でも医学に関係する事件や不動産や建築などの専門的知識が必要な調停事件のときに調停委員に選ばれます。離婚や相続を対象とする家事調停の場合には、弁護士以外の専門家調停委員が選ばれることはないでしょう。

離婚調停の場合には男女一組の一般の方が調停委員となります。離婚調停事件の場合に男女のペアが調停委員になるのは、男女間の不公平を避けるためです。しかし、私のこれまでの調停経験では、調停委員の男女を問わず、公平な人は男女どちらに対しても公平であるし、偏った考え方の人はその偏りが直りません。極端な男尊女卑の人は減っているとは思いますが、「これはこうすべきだ。」と一旦思い込むと自分の考えを押しつけてくるだけのひとがいるのです。 本人は善かれと思って発言しているので修正されることがないのです。

離婚調停の申立方法

家庭裁判所には離婚調停の申立書が用意されています。「夫婦関係等調整調停申立書」というものですがインターネットで検索して入手することもできます。その書類に必要事項を書き込んで印鑑を押し、収入印紙1200円を用意し、夫婦の戸籍謄本を添付して出せばいいのです。その他に連絡用の切手が求められますが家庭裁判所によって金額が違うので、管轄の家庭裁判所に問い合わせをします。

弁護士が委任を受けて調停申立をするときに家庭裁判所に用意されている調停申立用紙を使う人もいますが、私は使いません。定型の書式は使いにく重要なことを書くには不十分だからです。弁護士が委任を受けた以上は、たとえ調停であっても、将来、離婚訴訟になったときのことまで予測して準備するものです。調停だから簡単な書類でもいいということはないのです。