熟年離婚,離婚したいと思う時期

離婚したいと思う時期

これまでに多くの離婚事件を扱ってきましたが,離婚したいと思う時期は人によりそれぞれです。しかし,子供が中学に入る,高校に入る,大学を卒業するなど,子供が大きくなった時期というのは,以前から考えていた離婚を実行に移す一つのきっかけとなっています。熟年離婚は,夫が会社を定年退職する時期を一つのきっかけとしてする離婚という側面が大きいです。

妻の方はこれから夫が毎日、家にいられるのは嫌だし,夫の老後の世話もしたくない,夫の方は長い間,妻や家族のために一生懸命働いてきたという意識がありますから納得できないとなることが多い様です。気持ちのすれ違いが長い間、続いた結果の様です。

熟年離婚の原因

熟年離婚の一つの原因は,夫が親を見て育った時代の夫婦や家庭に対する考え方が変わってしまったことにあります。当時は正しかったことが社会の変化(発展)に応じて変わってしまったのです。女性の意識が大きく変わってきたし,社会の考え方も変わったのです。戦後は何も無い貧しい時代でしたから,とにかく一生懸命働いて生きていくことが大切でした。生きていくことだけでも大変な時代だったのです。そして、高度経済成長の時代を迎え,一生懸命働くことはやはり美徳のままでした。しかし,同じ時期に社会での男女のあり方に対する考え方は変わっていたのです。女性の社会進出,男女差別の解消,それは社会を変えただけではなく,女性の意識を変えていったのです。しかし,男性は会社という男性ばかりで,男性優位が最後まで続く世界で生きてきましたから,そういう変化に気づくのが遅れてしまいました。同じ時代を生きてきたのに,男性と女性の意識は大きく変わってしまったのです。

熟年離婚と離婚以外の問題

今では60代夫婦の離婚は珍しくありませんし,70代,80代の夫婦の離婚事件もあります。夫婦がそういう年齢になると、子供はすでに成人している場合が多いので心配は少ないのですが、離婚以外の別の問題が出てきます。夫婦それぞれの離婚後の老後の生活を考えなくてはいけないのです。老後の生活資金、住む場所、また数年後には何かしら子供たちの世話を受ける必要が出てくるかもしれません。自分はこれまでに貯めてきたお金で老人ホームに入るから子供の世話にはならないというつもりであっても、老人ホームに入るには保証人が必要ですし、老人ホームに入った後、さらに数年たって、手術が必要だとか、認知症が出てきたりしたときには、やはり身内の力を借りる必要が出てきます。離婚したら配偶者の力は借りられませんが、子供の助けは必要になるかもしれません。そうすると、子供との関係も大切だということになります。熟年離婚では、そういうところまで考えておくことが必要です。

私は古い親の世代の考え方も見てきましたし,その後の新しい考え方も理解しているつもりです。できるだけ当事者のお考えを理解して進めていますが,離婚は気持ちという心の問題が大きいので,どんな事件でも簡単ではないと感じます。