監護者を指定しなかった審判の例

平成26年8月15日大阪家庭裁判所審判(判例時報2271)

監護者指定審判却下事件

夫婦が同居生活しているときは問題ないですが別居しているときは子供の養育と関係して監護者を決めることがあります。夫婦の協議で監護者を決めるのが原則で決まらないときは家庭裁判所に申し立てて決めてもらうことになります。しかし,このケースで裁判所は未成年者の監護者を申立人と相手方のいずれかと指定することは相当でないとして却下しました。

事案の概要

妻と夫は平成17年に婚姻して二人の子供が生まれました(審判当時8歳と9歳)。夫には離婚した前妻との子が二人いました(当時16歳と17歳)。妻は夫の連れ子と養子縁組していません。婚姻後6人で生活していましたが,平成25年に妻が家を出て実家で暮らすようになりました。

それ以降は次のような生活が続きました。 月曜日から土曜日のうち,夕方に夫が不在で,妻が通常勤務(午後5時に勤務が終了する)のときは,妻は買物をした後に自宅に行き,夕食の用意をして,子供たちに食べさせるなどして一緒に過ごし,午後9時ないし11時頃に実家(母親宅)に戻る。夫は勤務を終えて午後11時か12時ころに自宅に帰る。

妻の勤務が遅出(午後8時に勤務が終了する)のときは,子供たちは妻の母親宅に帰り,妻の母親が作った夕食を食べる。妻は午後9時ころに帰宅して子供たちを自宅に送り届ける。

夫の仕事が休みの日や夫が早く帰宅する日は,妻が自宅に行くことはなく,夫が子供たちの監護をしている。

日曜日は,原則として,第2、第4日曜日は妻が,第1,第3日曜日は夫が,子供たちと過ごしている。 日曜日に妻が子供たちと過ごすときは,子供たちは土曜日の夜から妻の母親宅に泊まる。 日曜日に夫が子供たちと過ごすときは,家事や食事の準備を夫と一緒にした後,夫(父親)と外出することが多い。 妻と夫との間では離婚訴訟が継続していました。

妻の監護者指定審判事件における主張

夫は不貞行為が原因で職場を辞めてから職場を転々としたが生活態度に変化はなくギャンブル等の遊びにお金を使うのをやめなかった。妻は眠れない日が続きやむなく別居するに至った。現在の変則的な生活状況は不安定なものであり離婚訴訟で離婚が決まるまでの間未成年者の監護者を決めるのが相当である。夫は家事や育児ができない、喜ぶ物を買い与えることで未成年者の気を引きつけようとしている、妻の母親宅は手狭であるが妻が監護者となった場合には新しい住居に転居し3人で居住するつもりである。夫の連れ子は別々に住むことになっても未成年者らとの関係が絶たれるわけではない。

夫の監護者指定審判事件における主張

現在の監護状況はそれなりに安定しており未成年者らにとって望ましい状態である、未成年者らは自宅を離れることを希望していない、離婚自体に争いのある事案であるところ現在の共同監護状態を変更することは未成年者らの福祉に反する、 などの理由から本件では監護者の指定をすべきでない。

家庭裁判所調査官による未成年者らとの面接

調査官が面接したところ、未成年者らが両親の不仲に心を痛めていることや和合を望んでいること、夫の連れ子らも妻(母)への思慕や裏切られたような感覚などをもち、今後家族6人で暮らしたいがそれが無理ならきょうだい4人は離れたくないという思いを持っていた。

家庭裁判所の判断

現在は妻と夫がほぼ同じ程度に未成年者らの養育監護をしているということができ、共同監護のような状態であるといえる。 妻は夫の生活態度等について不満を述べるが本件記録を精査しても夫の未成年者らに対する監護養育に大きな問題があるとは認められず、現在の共同監護のような状態はそれなりに安定していると評価できる。 家庭裁判所調査官の調査において夫の連れ子は家族が元通りになるのが最も良いが少なくともきょうだい4人は離れたくないと言い、未成年者(父と母の間の子)らも元通りを希望している。 こうした子らの心情や現在の共同監護のような現状からすると、現時点において、未成年者らの監護者として妻と夫のいずれかを指定することは、未成年者らが妻と夫の双方と触れ合える現状を壊しかねず相当でないということができる。 以上のとおりであるから、未成年者ら監護者の指定を求める本件各申立は理由がないのでこれを却下することとする。 (理解しやすくするために表現等の改変があります)

感想

離婚裁判で離婚になれば親権もどちらかに決まりますがそれは離婚を判断する裁判所が決めることです。この事件の審判官は、裁判で離婚が認められるかどうかも分からないときに監護者を一方にしてしまうと仮に裁判で離婚が認められなかったときにもその状態がずっと続いてしまい、それは子供たちにとって不幸なことだと考えたのでしょう。

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