面会交流不履行一回につき20万円の強制金を認めた例

大阪高裁平成30年3月22日(判例時報2395号)

別居親と子との面会交流を拒否する(子との)同居親に対し,面会交流を拒否したときには金銭を支払わせるという強制方法があります。

紹介するのは不履行1回につき20万円という高額な強制金を認めた例になります。

事案

父と母は平成27年に別居し,母は平成25年生の子を監護して育てています。
平成27年,父は母に対し子との面会交流を求める調停を申立てました。
平成29年,家裁は毎月一回の面会交流を認める審判をしました。それに対し母が即時抗告をしました。大阪高裁は,審判を一部変更して当初3回は二カ月に一回の頻度とし第三者の立会いを認める決定をしました。
母親は別居から調停までの間に3回,父親と子どもを合わせたことがあったが,調停の前後を通じて面会交流を一貫して拒否し,審判における親子交流場面調査にも出頭しませんでした。
母親は高裁決定が決めた初回の面会交流にも応じませんでした。
そこで父親は平成29年,面会交流に違反した場合に強制金を払わせるという間接強制を家庭裁判所に求めました。
家庭裁判所は,面会交流を一回不履行にするごとに金5万円を払うことを命じる決定をしました。その後母親は2回程度,面会交流に応じました。
父親は,母親に対し婚姻費用の分担金として毎月21万円支払う義務を負っています。
母親は,歯科医師で476万円の年収です。
こういう状況で,高裁が下した決定が今回の判例です。言葉を分かりやすさのために変更しています。

大阪高裁決定

母親は,父親との別居の後,調停前後を通じ,父親と子どもとの面会交流を拒否し続け,審判手続における親子面会交流調査にも出頭しなかった。
その後,本件決定が確定したことにより,母親は本決定別紙面会交流実施要領に従って父親と子どもを面会交流させる義務を負い,母方祖父母の協力(立会い,受渡し)を得てその義務を履行することができたのに,第三者機関の関与に固執して,
面会交流を拒絶し,原審に本件申立がされてもその義務を履行しないことを正当化し続け,原決定で強制金の支払を命じられると,ようやく面会交流に応じる姿勢に転じたものである。
このように母親は,父親との別居から約3年間,父親と子どもとの面会交流を拒否し続け,本件決定後も,これにより定められた義務を任意に履行しなかった。母親が上記義務を履行したのは,原決定による強制金の支払を命じられた中でのことである。
これらの母親の面会交流に対する約3年間にわたる拒否的な態度に照らすならば,原決定後に母親が本件決定により定められた義務を2回程度履行したからといって,母親が今後もその義務を継続的かつ確実に履行するとみることは困難である。
したがって,原決定後に母親が面会交流に応じているとの現状を踏まえても,なお母親に上記義務を継続的かつ確実に履行させるためには,母親の収入や経済状況(
父親から支払われる婚姻費用を含む。)等を踏まえ,母親に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要がある。
その強制金の額については,母親が歯科医師の資格を有し,現在まで歯科医師として稼働し続け,別件決定時点において,勤務医として年収500万円弱を得ており,その稼働能力が低減したとの事情は認められないことや,父親が母親に対して支払うべき婚姻費用分担金の金額(月額21万円)などの事情に照らし,不履行1回につき20万円とするのが相当である。

高裁決定の意義

この母親は父親と子どもとの面会交流を徹底的に拒否し続けてきました。それに対して高裁が厳しい履行の強制をしました。面会不履行一回につき20
万円ということは,子どもに会わせなかった場合はその月の婚姻費用21万円をほとんど払わなくていいという結果になります。結果的に婚姻費用と面会を秤にかけるようなこととなっています。この様な結果が一般的になることはないでしょう。この事件の母親が面会させないことがあまりにも酷かったので厳しく判断したという事例判決です。

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