子供との面会を拒否したことについて損害賠償を認めた例1
東京地方裁判所昭和63年10月21日判決
離婚のときに子供との面会を約束してもその約束が守られないことがしばしば起きます。学校行事や風邪を引いたなど子供の側の事情で面会できないのは仕方ないのですが、特別の理由なく会わせないという嫌がらせもあります。そういうこときに損害賠償を認めた判決があります。
事実経過
ある夫婦が長女が3歳半のときに離婚しました。父親が親権者となり,母親が長女を監護する,父親は次のように長女と面会する約束をしました。 1カ月に1回(原則として全日),父親と長女は面会する。 この他に父親と長女は6カ月に3回面会し,この面会を利用して父親は長女の心身の発育,健康,生活状況を考慮し,これを乱さないように配慮し,母親と協議のうえで長女と宿泊旅行することもできる。
しかし,母親は,この約束があるにもかかわらず,面会させなかったり,面会させても全日という原則を守らず,また、面会の日時を設定しても一方的にこれを履行しなかったということで,父親が母親に対して損害賠償を請求しました。
欠席判決
この裁判に対して,被告である母親は,裁判の呼び出しを受けていながら口頭弁論期日に出頭せず,答弁書等の書面も提出しませんでした。民事訴訟では,その様な場合には原告の主張である請求原因を認めたものとして扱われます。したがって,原告の勝訴、被告の敗訴となります。
慰謝料の金額
裁判所は,協議離婚に際して面会約束が決められていたのに,面会できなかったため精神的な損害が発生したことは認めました。ただし,裁判所は,損害額については原告の主張が高すぎるとして認めず独自の判断を示しました。 まず,全日面会のはずなのに午後2時または2時半から面会がされたときは一回あたり5,000円,午後7時から面会がなされたときは一回あたり1万円の慰謝料,面会の約束がなされなかった場合は一回あたり2万円,面会の約束がなされたのに破棄された場合は一回あたり3万円の慰謝料が相当であるとしました。 古い裁判ですし欠席判決でもありますが、離婚後の子供との面会約束を不当に破るときは慰謝料を発生させるという一つの参考になります。