長期別居でも年金分割割合が0.5とされた例

大阪高裁令和元年8月21決定 判例時報2443号
夫婦が1974年に結婚してから1983年に別居し(同居期間は9年間)、1985年からは没交渉となりその後約35年間、別居を続けて2018年に離婚しました。離婚した後の年金分割の按分割合が争いになりました。

第一審の家庭裁判所は0.35としました

年金分割の制度が出来る以前の期間についての年金分割の按分割合は、当事者で合意できないときは家庭裁判所に決めてもらうことになります。この高裁の事件の第一審がその審判でした。
第一審の家庭裁判所は、1985年以降は夫婦が没交渉であったことを重く見て、昭和60年以降は夫婦としての扶助協力関係にあったものとはみられないので保険金納付に対する夫婦の関与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合にあたるとして按分割合を0.35としました。

高裁の判断は0.5でした

高裁は、夫婦の婚姻期間44年間中、同居期間は9年間程度にすぎないものの、夫婦は互いに扶助義務を負っている、このことは夫婦が別居した場合においても基本的に異なるものではなく、老後のための所得保障についても夫婦の一方または双方の収入によって同等に形成されるべきものである・・・夫婦が別居に至ったことや別居期間が長期間に及んだことについて、妻に主たる責任があるとまでは認められないことを併せ考慮すれば・・・按分割合を0.5としない特別の事情があるということはできない。と判断しました。
解説
年金分割の按分割合を裁判所が0.5以外にした例はほとんどないので、どうしても0.5以外にしたければ双方の同意でする以外ありません。ところが裁判所に決めてもらえばほとんど0.5になるのですから譲歩を求められても譲歩する理由がありません。したがって双方の同意でも0.5を変えるのは困難です。年金分割では争わず、別の点で頑張る方がいいです。

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