婚姻破綻事件で2つの逆転勝訴判決

家裁判決を高裁で逆転して離婚が認容された

この1年間を振り返ると思い出深いのは,当方が原告(夫)として離婚請求した裁判が家裁で棄却され,それを高裁で逆転勝訴することが2回あったこと。年としては2年間にまたがりますがそういう事件が2件あったことです。高裁で逆転勝訴して離婚できた事件としてはトータルで3件となります。私からすると一審の家裁が書いた不当判決が高裁で是正されたことになりますが,別の見方をすると裁判所によって判断が分かれうる難しい事件だったということです。

この逆転勝訴した3件の事件に共通するのは,不貞行為やひどい暴力などの決定的な離婚原因がないときに性格の不一致,婚姻関係の破綻が争点になった事件だということです。

離婚事件の難しさ

離婚事件というのは一般的に人の気持ちや感情の問題が大きいですから,担当する弁護士には他人の気持ちを理解することができる能力が必要ですし,事件の相手から弁護士に対する暴力につながるケースもあり基本的には難しいものです。事件の本質や問題点をつかんで適切な解決方法を探り裁判になったときの見込みをできるだけ正確に把握することも必要です。しかし,経験不足の弁護士の中には,離婚事件は依頼者から事情を聞いて訴状を書けばいい単純な事件だと思っていて,勝訴できるかどうかや和解の見込みなどを十分に検討することもないままに訴訟提起したと思われる事件も多いので困ります。

婚姻破綻という離婚原因の難しさ

そして,離婚事件のなかでも性格の不一致,婚姻関係の破綻を離婚原因とする離婚事件はとくに難しいものです。その他の離婚原因と違って「婚姻破綻」というのは抽象的なのでどのような状態になったら「婚姻破綻」なのか明確ではないから判断がとても難しいのです。どの弁護士でも簡単にできるものではありません。

まず婚姻破綻といえる状況なのかどうかを,よく話を聞いて慎重に見極めることが必要です。この判断を適切に行い裁判になったときの勝訴可能性,敗訴の可能性を相談者に伝えて方針を決めていただきます。そして裁判にするときは徹底的な立証活動が要求されます。

裁判になっても和解で離婚できれば良いのですが,なかには絶対に離婚に応じようとしない人もいます。離婚に応じない動機の中には怒りや報復,嫌がらせなど色々な気持ちが入っているのでしょうが,多くの場合は金が大きな動機の一つになっています。婚姻破綻と言えるのは既に双方共に愛情などとっくになくなっている場合ですので,経済的理由だけが大きく浮上してくるようです。本心は経済的理由から被告が婚姻破綻はしていないと主張し,和解を拒否し続けると判決に至ることがあります。そして一審裁判所である家庭裁判所の裁判官が誤った判決を書くと控訴せざるをえなくなり,控訴審判決を受けることになります。

離婚事件は,話合い,調停,裁判所での和解など,当事者の合意により解決することが多いので判決に至ることはもともと少なく,さらに控訴審で和解することも多いので高裁判決を受けることはとても少ないものです。

和解による解決か望ましい

離婚事件も話合い解決が望ましいので,私が離婚事件を受任した場合,相手との話合いで解決するために最初から努力を尽くします。実際,離婚事件の多くは調停や裁判上の和解で解決しています。

控訴したら高裁で簡単に逆転勝訴できるというものではありません。一審敗訴でとても不利な立場に追いやられてしまったのをそれまで以上に努力してやっと当方の主張が認められたというに過ぎません。やはり判決を受けるということは怖いものであり,どんな事件であっても和解による解決,双方の合意に基づく解決が望ましいものです。経験豐富な弁護士であれば皆この和解のための努力を十分にするものです。