大阪高裁平成28年3月17日決定
大阪高裁は不貞行為をして別居の原因を作った妻が,別居中の夫に対して自分の婚姻費用を請求することを否定しました。
事案
夫婦には3人の子供がいました。子供は当時,長女(私立高校音楽科でバイオリンを専攻する高校生),二女(中学二年生),長男(中学一年生)の3人でした。夫と妻は平成27年〇月に,まず夫が家を出て,ついで妻が3人の子と共に家を出て別居が始まり,妻が夫に対して婚姻費用の分担請求調停を起こしました。
大阪高裁の決定内容
婚姻費用分担義務について 夫婦は,互いに生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負う。この義務は,夫婦が別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合にも影響を受けるものではないが, 別居ないし婚姻破綻について専ら又は主として責任がある配偶者の婚姻費用分担請求は,信義則あるいは権利濫用の見地からして,子の生活費に関わる部分(養育費)に限って認められると解するのが相当である。
という一般論を展開した後に,本件の特徴的なこととして次の様に述べました。
夫と妻が平成25年に再度同居した後,妻は本件男性講師と不貞関係に及んだと推認するのが相当であり,夫と妻が平成27年〇月に別居に至った原因は,主として妻にあるといわざるを得ない。妻は,上記不貞関係を争うが,妻と本件男性講師とのソーシャルネットワークサービス上の通信内容からは,前記のとおり単なる友人あるいは長女の習い事の先生との間の会話とは到底思われないやりとりがなされていることが認められるのであって,これによれば不貞行為は十分推認されるから,妻の主張は採用できない。そうとすれば,妻の夫に対する婚姻費用分担請求は, 信義則あるいは権利濫用の見地から,子らの養育費相当分に限って認められるというべきである。
ソーシャルネットワーク上の会話から妻の不貞行為を認め,この妻の不貞行為が別居の原因であるから,妻の分の婚姻費用分担請求は認められない(子供の分だけ認める)という結論を下しました。自ら不貞行為をして別居に至った者が自分の生活費を配偶者に払えというのは認めないということです。