離婚に伴って財産分与をする場合、どのような税金がかかるでしょうか。
財産分与を支払う人に対する課税
財産分与を金銭で支払う場合
財産分与を金銭(金銭債権)で支払う場合、その金銭を支払う人(給付者)に課税されることはありません。
財産分与を金銭以外の物で支払う場合
財産分与を金銭以外の資産で支払う場合は、譲渡所得の課税要件である「資産の譲渡」に当たり、支払う人(給付者)に譲渡所得税が課せられる可能性があります。財産分与として渡した資産が分与したときの時価で譲渡されたものとして、それを譲渡所得の収入金額とする所得計算が行われます。「なんで金をもらう方じゃなくて金を払う方に税金がかかるんだ!!???」と感じると思いますが、 残念なことに税金がかかってしまいます。
裁判所も、「譲渡所得に対する課税は、資金の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産がその所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、その資産の移転が対価を伴うものであるかどうかにかかわりなく、これを清算して課税する趣旨のものであるから、夫婦の一方が離婚に伴う財産分与として他方に譲渡した場合には、右資産が譲渡人の特有財産であるときはもとより、右資産が譲渡人と譲受人の共有財産であるときは譲渡人が有する持分の限度で、譲渡所得の基因となる資産の移転があったものとして、課税の対象となると解するのが相当である。」(東京地裁昭和48年3月22日判決、同事件の控訴審はこの判断を是認しました)としています。
市民感覚では金を出す方にさらに税金がかかって、まさに踏んだり蹴ったりですが、税金の考え方は違うのです。 ですから、財産分与として金銭以外の物(不動産など)を分与するときには、その財産を渡す方に譲渡所得税がかかってくることを考えておかないと、後で困ったことになります。実際、財産分与契約をした後に高額な譲渡所得税が課税されることを知った夫が、財産分与契約の錯誤無効を訴えたという事件も起きています。
「財産分与として資産の譲渡がされた場合における譲渡益は、財産分与の時におけるその資産の評価額から、その取得費およびその譲渡に要した費用の合計額を控除して計算すべきところ」(東京地裁昭和48年3月22日事件判決より)とされていますので、どうしても譲渡所得税がかかるときは、所得から控除できるものなどについて税理士の相談を受けておく必要があります。 なお、婚姻期間が20年以上の夫婦で土地建物の分与が行われる場合は、離婚前であれば、贈与税の配偶者控除の特例の適用が考えられます。また、給付者が居住の用に供していた土地建物を分与する場合は、離婚後の財産分与であれば譲渡所得税の特別控除の適用もありうるので、やはり税理士に相談しておきましょう。税金の問題は税金の専門家に相談しておくべきです。弁護士は仕事の関係で僅かな税知識があるにすぎず税の専門家ではありません。
財産分与をもらった人に対する課税
財産分与を受けた者に対して贈与税が課税されることはありません。ただし、その分与にかかる財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合は、その過当な部分について贈与があったものとみなされます。また、離婚を手段として贈与税もしくは相続税のほ脱を図ると認められた場合も贈与があったものとみなされます。