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子供との面会交流を強制する方法(2)

投稿日: 2015年9月21日  | カテゴリ: 離婚と子供の問題,養育費等

離婚後の父親と子供の面会交流の重要性を認めた

これは平成25年最高裁決定の約一年後に,離婚後の父親と子供との面会交流に関して間接強制を認めた判決です。この高裁決定は,間接強制を認めたという点でも意義ある判決ですが,それだけではなく,離婚後の父親と子供との面会交流が子供の福祉にとって重要であると高く評価した判決として重要です。高裁決定の文面を引用します。事実認定の部分も重要なのて,相当,長い引用となります。

東京高等裁判所平成26年3月13日決定

2人の子供のいる夫婦が離婚し,母親が監護親,父親が非監護親となりました。 離婚後,父親が子供との面会を求め,家庭裁判所で面会交流を認める審判が出ました。その審判には次の様な面会条項がありました(なお,裁判の内容等は理解しやすくするために簡略化や言い換えをしています。)。

(1) 2カ月に1回,ただし,毎偶数月の第1日曜日とし,第1日曜日に面会が実施されなかったときはその月の第2日曜日,第1日曜日にも第2日曜日にも面会が実施されなかったときは,その月の第3日曜日とする。

(2) 母親が父親または父親が予め指定した者に対し未成年者らを引き渡してから母親が未成年者らの引渡を受けるまでの時間を,面会1回につき2時間とする。ただし,父親の判断により短縮することを妨げない。

(3) 甲県乙市内において面会を実施し,父親は面会交流を支援する第三者を立ち会わせることかできる。第三者の立会いに要する費用は父親が負担する。母親は面会に立ち会わない。 こういう内容の審判があることが前提です。

監護親である母親の主張

さて,母親は,「長男は12歳,長女は10歳で,自分の意思を表明できる年齢になっており,子供たちが父親に対して著しい嫌悪感を抱いているのに,父親が無理やり面会交流させるのは実際には困難である。」と主張しました。

裁判所の判断

これに対して裁判所は,「確かに,一件記録によれば,長女は『お母さんにぼうりょくをふるったり本当にやめてもらえますか?』『わたしたちのお母さんをくるしめないでもらえますか?』『わたしは,あなたのことが世界一きらいだし,あなたのことお父さんなんて思っていません。』などと書いた書面を原審に提出しており,また,長男は,FPIC乙(注:FPICとは,公益社団法人家庭問題情報センターのこと。)から母親に送られた文書に,『ふざけるな,ふざけるな,ふざけるな』『死,死』『おまえは死ねばいいんだよ,このクソやろう』『お母さんを苦しめるな』などと乱暴に大きな字で走り書きしているのであって,現時点において,未成年者らが抗告人に対して激しい憎悪に近い特殊な感情を有していることが一応認められる。」

「しかしながら,同じく一件記録によれば,父親と母親は平成19年4月上旬ころから別居しており,その当時,長男は5歳,長女は4歳であったのであり,以後,父親と母親が接触して父親が母親に対して暴力を加えたりしたことはないから,未成年者の上記の感情は,未成年者らが幼かったときの体験だけではなく,その後同居して一緒に生活している母親の影響を大きく受けたことによって獲得されたものであることが容易に推認される。

ちなみに,父親と母親との離婚訴訟の判決においても,夫婦が不仲になった原因は,父親がトイレを使用した後に蓋を閉めなかったとか,浴室やトイレの電気を消し忘れたとか,抜け落ちた髪の毛を放置したなどの日常の些細なことに対して, 母親が口やかましく注意し,目の付くところに注意の張り紙をするなど異常な対応をとったうえ,次第に父親の人格まで非難するなどエスカレートしていったことから,口では負ける父親が母親の腕を叩くなどして,夫婦の亀裂が決定的なものとなっていき,平成18年1月頃には母親は父親の食事を一切作らなくなり,父親もできる限り母親と接触しないように,朝は出勤直前まで寝ていて,夜は外食して遅く帰宅するなど生活もだらしなくなり,そのことからまた,母親は未成年者らの前でも,父親に対して汚い,臭いなどと罵り,食事中に父親が近づくと, 未成年者らと一緒に別室に移動するなどしたため,未成年者らも父親を蔑視するようになり,平成18年8月頃に父親が海外出張中に自宅に電話すると,わずか3歳の長女が「あっ,おやじだ。」と発言し,4歳の長男も「早く切れ。」と長女に命じるなどの状況であったことが認定されているところである。

このように,未成年者らは,幼いときから,父親に対して生理的な嫌悪感を感じた母親の影響を強く受けて,父親に対する特殊な感情を抱くに至っており,父親との面会交流に極めて消極的な姿勢であることは明らかである。

母親が子供を操作してきたと認めた

しかしながら,他方において,父親として未成年者らに対して何か危害を加えたとか,その福祉に反するような行いをしたということはなく,もっぱら母親との関係が悪化したことにより,母親がまだ幼い未成年者らにも母親と同じ対応をとるように仕向けた結果,徐々に現在の未成年者らの父親に対する態度が形成されていったものであると考えられるから,その意味では,母親は,未成年者らの父親に対する受け止め方や評価を操作したものと同じであり,未成年者らと父親との健全な父子関係の構築や発展を,自己の不安定な感情にまかせて実質的に阻害してきたものということができ,その意味では,未成年者らの監護者としての適格性にも大きな問題があるところである。

そして,現在では,未成年者らはいずれも10歳を超えて思春期に差しかかっており,そうでなくても自我の発達や身体的発育等に伴ってさまざまな悩みや不安を感じたりして難しい年頃であるのに,父親との父子関係に大きな傷を受けており,本来であれば,早期に専門家のカウンセリングを受けるなどのケアが必要な状況にあるものと考えられるが,幸いにも,FPICは,そのような問題について家庭裁判所の調査官等として豊富な知識と経験を有する人材等を擁する組織であるから,本件においても,FPIC乙の手助けを受けながら,少しずつでも徐々に未成年者らと父親との面会交流を実現していくことが,未成年者らの将来の福祉に適うものであることは明らかである。

母親は,前記のとおり,自分は未成年者らと父親との面会交流を否定するつもりはないものの,未成年者らが父親との面会交流を嫌がっているので仕方がないと主張しているが,一件記録によっても,母親は,原審から裁判所所定の名称と住所等が印刷されている封筒で関係書類が繰り返し送達されているにもかかわらず, 全く無視して受け取らず,FPIC乙の関係職員に対しても一方的に苦情を述べて連絡しないよう申し入れるなどして,全く誠意ある対応をとろうとはしていないことは明らかである。

本来,母親は父親に対する子供のわだかまりを解消すべきである

母親は,これまでにも未成年者らと父親との面会交流を命じられているのであるから,本来であれば,仮に未成年者らが父親との面会交流を嫌がっていても,父親は未成年者らにとって血を分けた父親であり,いざというときには未成年者の力になってくれる存在であることなどを根気よく説明するなどして,未成年者らが父親と少しでも直接交流して,わずかずつでも心のわだかまりを解消できるよう努力すべきであるのに,未成年者らを口実に,父親が未成年者らと会うのを妨げており,これをそのまま放置しておくことは,客観的かつ長期的観点から,未成年者らの福祉を阻害することが明らかであって,もはや未成年者らの現在の気持ちを尊重していればよいというものではなく,FPIC乙等の専門家の手助けを受けながら,少しずつでも徐々に未成年者らと父親との面会交流を実現して,父親の姿や態度等をそのまま経験的に感じさせていくことが必要であるから,未成年者らが父親との面会交流に消極的であるということは,未成年者らと父親との面会交流を妨げにはならないというべきである。

父親との面会交流に対する高い評価

 離婚する前も離婚した後も,実際に子供と生活している親が,配偶者に対する悪意から(離婚しようとする位ですから嫌っているわけです),子供に会わせないように嫌がらせをすることはよくあります。この高裁決定は,そういう親の身勝手な行動を厳しく戒めました。

この高裁決定が,「母親は,本来であれば,仮に未成年者らが父親との面会交流を嫌がっていても,父親は未成年者らにとって血を分けた父親であり,いざというときには未成年者の力になってくれる存在であることなどを根気よく説明するなどして,未成年者らが父親と少しでも直接交流して,わずかずつでも心のわだかまりを解消できるよう努力すべきである」などと述べた判断は,親と子供が別居する事件一般に通用する規範としての高い意義があると思います。

面会交流の間接強制が可能

面会交流の強制に関する判断 一番最初に書いた面会交流の条件について,これは間接強制可能であると判断しました。その判断の部分は次のとおりです。 「面会交流の日時又は頻度及び各回の面会交流時間の長さについては,監護親である相手方がすべき給付の特定に欠けるところはない。これに対して,子の引渡しの方法等については,本件審判の主文(3)では,甲県乙市内において面会を実施し,面会交流を支援する第三者を立ち会わせることができるとされているが,未成年者らの引渡場所等は,その記載上は具体的に特定されてはいない。 しかしながら,他方で,本件審判の主文(2)には,母親が父親又は父親が予め指定した者に対し未成年者らを引き渡すことが明記されており,しかも,一件記録によれば,父親が予め指定した者とはFPIC乙の職員であり,母親が同職員に未成年者らを引き渡すことか当事者双方の共通の認識になっていたことが認められる。・・・このような本件の事実関係の下においては,面会交流の実施に必要な子の引渡しの方法についても,父親と母親との間で,母親がFPIC乙の職員に未成年者らを引き渡すということで黙示の合意があり,そのことを前提として, 本件審判では,上記の様な定め方がなされたものであることが認められるから,本件審判では,実質的に,未成年者らの引渡方法等についても具体的な定めがあるものとみることができる。」

一回,一人,2万円の間接強制

東京高裁はこの様に判断して間接強制を認め,その金額については諸般の事情を考慮して,不履行一回につき,一人2万円の割合による強制金を支払うよう命ずるとしました。 高等裁判所の判断というのは非常に大きな意味を持つものです。別居する父親と子供との面会について重要な意義を認めたこの東京高裁決定は今後いろいろな事件における判断をリードしていく可能性があります。


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