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夫婦の同居義務に関する高裁判決

投稿日: 2019年5月26日  | カテゴリ: 離婚,その他の問題

福岡高裁平成29年7月14日決定(判例時報2383号)


別居中の夫が妻に対して,同居を求めて家裁に審判を申立て,家裁は容認し,高裁がそれをひっくり返して申立を却下しました。夫婦の一方が別居して離婚を求めているときに同居義務を持ち出されてもそう簡単ではありません。これはそういう場合について判断した高裁の決定です。

 

事案


平成21年に夫婦は結婚し,25年に別居,26年に妻は離婚訴訟を起こしましたが,28年に高裁において離婚請求が棄却され,離婚は認められないことになりました。
その後夫は妻に対し,同居を求める家事審判を家庭裁判所に申し立てました。

 

(家庭裁判所の判断)


家庭裁判所は同居を命じる審判を出しました。佐賀家庭裁判所は,同居は夫婦の共同生活の本質的な義務であり,同居を拒否する正当な事由がない限り,同居を求めることができる。離婚請求を棄却した高裁判決の口頭弁論終結後に別居を拒否する正当な事由が生じたといえなければその義務は当然継続することになる。そして,妻が適応障害との診断がなされ夫との物理的,心理的な接近のたびに皮膚症状や不安感が生じるとしても,面会に先立ち坑不安薬を服用するという手段が示唆されているなどとし,夫が妻と長女のみと同居できる住居を定めたときに同居するように命じる審判を出しました。

 

(高等裁判所の判断)


同居義務に関する一般論

 

夫婦である以上,一般的,抽象的な意味における同居義務(民法752条)を負っている。
しかし,この意味における同居義務があるからといって,婚姻が継続する限り同居を拒み得ないと解するのは相当ではなく,その具体的な義務の内容(同居の時期,場所,態様等)については,夫婦間で合意ができない場合には家庭裁判所が審判によって同居の当否を審理したうえで,同居が相当と認められる場合に,個別的,具体的に形成されるべきものである。
そうであるとすれば,当該事案における具体的な事情の下において,同居義務の具体的内容を形成することが不相当と認められる場合には,家庭裁判所は,その裁量権に基づき同居義務の具体的内容の形成を拒否することができるというべきである。
そして,同居義務は,夫婦という共同生活を維持するためのものであることからすると,共同生活を営む夫婦間の愛情と信頼関係が失われる等した結果,仮に,同居の審判がされて,同居生活が再開されたとしても,夫婦が互いの人格を傷つけ,または個人の尊厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる場合には,同居を命じるのは相当ではないといえる。
そして,かかる観点を踏まえれば,夫婦関係の破綻の程度が,離婚原因の程度に至らなくても,同居義務の具体的形成をすることが不相当な場合はあり得ると解される。
※ 高裁は,同居義務という抽象的な義務について認めるべきでない場合がありうるという規範を示しました。夫婦関係の破綻について程度について,「離婚原因になる程度」という以外に「同居義務の具体的形成をすることが不相当な程度」の夫婦関係の破綻という状態がありえると判示しました。

 

具体的な事案に関する高裁の判断

 

高裁は具体的な事実関係から,この事件については次のように判断しました。
妻について,あらかじめ薬を服用することで適応障害の症状を抑えることができる可能性はあるとしても,
そのようにしてまで夫との同居生活を再開したところで,妻において,早晩,服薬によって症状を抑えることも困難となり,再度別居せざるをえなくなる可能性は高いということができ,
夫が作成した書面の内容や,これまで当事者双方が互いに批判的で疑心暗鬼の状態にあることに照らすと,そのような事態に至ったときに,夫から妻に対し,適切な配慮がされるとは思われず,相互に個人の尊厳を損なうような状態に至る可能性は高いと言わざるを得ない。
また,本件においては,妻が提起した離婚訴訟において,いまだ婚姻を継続しがたい重大な事由があるとまでは認められないとして妻の請求を棄却する判決が確定しているものの,控訴審判決は上記の別居期間が妻と夫において共に生活を営んでいくのが客観的に困難になるほどの長期に及んだものとはいえないとし,婚姻関係の修復の可能性がないとまではいえないことから妻の離婚請求を棄却したにとどまるものであって,
妻と夫の婚姻関係は上記判決の時点でも既に修復を要するような状態にあったことは明らかである。
そして,控訴審における弁論終結の時点で,婚姻期間中の同居期間が約3年10ヶ月出あるのに対し,別居期間は約2年7ヶ月に及んでおり,その後,妻の夫に対する不信感等は,夫自身をストレッサーとして適応障害の症状を呈するほどに高まっている。
そうすると,妻と夫との夫婦関係の破綻の程度は,離婚原因といえる程度に至っていないとしても,同居義務の具体的形成をすることが不相当な程度には至っていたというべきである。
以上に述べた諸事情を踏まえると,現時点において,妻と夫について,同居義務の具体的内容を形成するのは不相当と認められる状況にあるということができる。


※ 率直なところ当然の判決です。いくら法律に同居義務と書いてあっても,「嫌だ」という人を無理やり連れてくることはできません。それはかえって関係を悪くすることが多いでしょう。高裁は具体的事案を丁寧に分析して,それ以上夫婦関係を悪化させないようにしたのだと思います。
 


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