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別れた妻に対するマンション明渡が権利濫用になる場合

投稿日: 2020年2月19日  | カテゴリ: 離婚,その他の問題

元夫から元妻に対する建物明渡し請求が権利濫用とされた例
札幌地裁平成30年7月26日判決(判例時報2423号)

 

事実経過

 

夫と妻は平成8年に婚姻し9年に長女が出生しました。
平成20年に夫がマンションを購入し、100%夫名義で登記しました。
平成23年4月から夫は単身赴任となり、妻と子はマンションに住み続けました。
平成28年、夫婦は裁判により離婚しました。
平成29年、夫は妻に対してマンションの明渡しを求めて訴訟提起し、妻は夫に対し財産分与を求める調停を申し立てました。
なお、マンションは住宅ローンの負債額が資産価値を上回るオーバーローンの状態でした。この判決は夫から妻に対するマンション明渡請求に対して、妻側がした主張が認められるかどうかを判断したものです。この明渡請求裁判のときはすでに離婚していたので文中に夫や妻とあるのは、元夫、元妻のことです。

 

問題1・100%元夫名義マンションの所有権を別れた妻も有するか?

 

妻は、マンションは夫名義であるが妻のパート収入等も返済原資になっており民法762条2項により夫と妻の共有に属するもの推定され財産分与の対象となる共有財産であると主張しました。
裁判所はこの妻の主張を認めませんでした。裁判所は「夫と妻の離婚に伴う財産分与において、妻が本件マンションの所有権ないし共有権の分与を受ける可能性があることまでは否定できないものの、協議ないし審判前の財産分与請求権は、協議・審判によって具体的内容を決定されることを要する権利であり、協議又は審判によって始めて具体的な権利性を有すると解するのが相当であることに加え、
弁論の全趣旨によれば、本件マンションの住宅ローンの負債額が、夫と妻の総資産額の合計を上回っていると認められるから、現時点において、妻が本件マンションに対し具体的な共有持分権を有しているとすることはできない。」と判示しました。

 

問題2・元妻はマンションの使用貸借権を有するか?

 

妻は、夫が単身赴任したときに妻と子が無償ですることを許諾したから使用貸借契約が成立しており居住を続けることができると主張しました。
裁判所は、使用貸借契約が黙示に締結されていたとしても、当該契約はその性質上当然に婚姻関係が終了することを解除条件とするものであったと解される。したがって、離婚した現在、妻が本件マンションの使用借権を有しているとはいえない、と判断しました。

 

問題3・元夫の元妻に対する明渡請求は権利濫用にあたるか?

 

裁判所は、権利濫用という妻の主張を認めました。
裁判所は、婚姻期間中に形成された財産関係の離婚に伴う清算は財産分与手続きによるのが原則であるから、本件マンションの帰趨は財産分与手続きで決せられるべきであり、このことは本件マンションの住宅ローンの負債額が夫及び妻の総資産額の合計を上回っている場合でも変わらない。このような意味で、妻は、財産分与との関係で、本件マンションの潜在的持分を有しているところ、当該持分はいまで潜在的、未定的なものであっても財産分与の当事者間で十分に尊重されるべきである。よって、夫が、近々財産分与申し立て事件の審判が下される見込みである中、同手続外で本件マンションの帰趨を決することを求めることは、妻の潜在的持分を不当に害する行為と評価すべきであり、権利濫用に当たるというべきである。と判断しました。したがって、夫から妻に対する明渡請求は認められませんでした。

 

問題4・元夫はマンションを使用する元妻に対し賃料相当損害金の請求ができるか?

 

裁判所は、マンションの明渡しは権利濫用として認めませんでしたが、賃料相当損害金の請求は認めました。


(感想)


これはマンション名義人である夫から別れた妻に対する明渡請求がいつでも認められないということまで言っているわけではありません。マンションについては財産分与手続きで決められるべきであり、その審判手続きが行われているときに別の裁判で明渡という効果を得ることが不当だという論理になっています。
また、妻が離婚した後も夫名義のマンション住み続けている以上、賃料相当損害金を払う義務を負うのは仕方のないことでしょう。この判決におけるどの判断も妥当なものであると思います。


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