熟年離婚などで、離婚するときには配偶者がまだ在職中だけれども、離婚してからあと1年経つと定年退職の時期なので退職金が入る様な場合、将来、支払われる退職金は財産分与の対象になるでしょうか。財産分与は離婚までの財産の清算ですが、離婚時にはまだ退職金は手にしていませんし、退職金は将来、退職すればもらえるだろうという期待にすぎないのではないかという問題です。
この点については、退職金は賃金の後払いという性質がありますので、基本的には財産分与の対象になると考えられます。ただ、退職金は、退職するときにはしっかりとした権利ですが実際に退職して支払われるまでは単なる期待にすぎないわけです。たとえば、「このままあと10年働けば、これだけ退職金がもらえるはずだ」といっても、10年以内に事故や病気で働けなくなるかもしれません、リストラされるかもしれません、会社が倒産してしまうかもしれません、不祥事を起こして解雇されるかもしれません、そういった不確定要素がありますし、財産分与として将来の退職金を分けるとしても、実際に現金が入ってくるのは将来のことですから、離婚したときにすぐに払うのも困難です。
そこで、離婚から退職までの期間や、勤務する企業の退職金規定や企業の安定性なども考慮したうえで財産分与の対象に含めて判断されることになります。普通は離婚から退職までの期間が1~2年とか数年間程度のときに問題にされることが多いです。大企業や公務員であれば10年を少し経過するくらいまでは認められる可能性があります。退職までの期間が短ければそれだけ認められやすいですし、勤務先の安定性も判断要素の一つになるでしょう。ただし、退職金が財産分与の対象になったとしても、その支払い時期は将来、退職金が支払われたときとすることもあります。そうしないと、万一、途中で会社が倒産して退職金を受け取れなくなった場合などにその危険を支払い側が負担することになってしまいますから。
ずっと若い人の離婚のときは、そもそも退職金の金額が少ないですし不確定要素が大きすぎるので退職金はあまり考えないのが普通と思います。それに夫婦共働きの場合は、お互いの退職金が財産分与の対象になることになり、多少の損得はあるでしょうが面倒なのでお互いに分与対象にしないとすることもあります。