既に支払われた退職金と財産分与

退職金は財産分与の対象になるか

婚姻期間中に夫婦で作った財産が財産分与の対象になります。退職金は賃金の後払いという性質がありますので、離婚する前に配偶者が勤務先から退職金を受け取っていた場合は、退職金のうち婚姻期間に対応する分が財産分与の対象になります。

既に別居している場合

ただし、まだ離婚していないから婚姻期間は20年あるけれども、もう10年前に別居しているという場合は、別居後は夫婦としての協力関係が無くなり、夫の仕事に対する妻の貢献も無くなったと考えられるので、財産分与の対象になるのは別居までの期間である10年間分となります。

退職金の財産分与の計算例

たとえば、配偶者が勤務していた総在職期間が30年で、そのうち婚姻期間と重なる期間が20年だった場合は、20年/30年と考えます。つまり、支払われた退職金総額は、その人が会社に勤務していた総在職期間に対するもので、夫婦として協力(貢献)していたのは婚姻期間の20年だけだから、退職金総額の3分の2が財産分与の対象になります。結局、財産分与の対象になるのは、受け取った退職金の3分の2です。そして、夫婦二人でそれを分けるので、さらにその2分の1が分与されることになるのが原則です。

夫の総在職期間が30年、そのうちの婚姻期間が20年、退職金が3000万円だとすると、3000万円の3分の2である2000万円が財産分与の対象になり、妻にはその半分である1000万円が分与されるべきということになります。

ただし、同じケースで、婚姻期間は20年あるけれども、既に10年前に別居していたというときは、別居までの同居期間(=夫婦としての協力、貢献していた期間)である10年分だけが財産分与の対象になります。つまり、支払われた退職金の3分の1が財産分与の対象になります。そうすると、3000万円の3分の1である1000万円が財産分与の対象で、その半分を妻に分与すべきなので、結局、500万円を妻に分与すべきということになります。

ただし、退職金が住宅ローンの返済や家族の生活費等に消えてしまっているときは財産分与の対象財産が無くなったことになるので、また違う考慮が必要になります。退職からあまり時間が経ってしまうと、そのお金が使われて無くなってしまうこともあります。弁護士と相談しながら進めていくことをお勧めします。